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2013年~2016年までのさつまいも栽培を振り返る

なぜ出身地の宮城県山元町でさつまいも栽培をしたのかを聞かれる機会が増えたので、書いておこうと思います。これまでに書いてきた記事と重複している部分もありますが、詳細はカテゴリー『宮城県山元町でのさつまいも栽培』を読んで頂ければと思います。

さつまいも栽培の契機

そもそものきっかけは、東日本大震災でした。あの日を境に自身の生き方が変わったとういか、変わらざるを得なくなりました。様々な葛藤を経て、ようやく動き出したのが2012年の後半、実質は2013年からでした。

震災後の宮城県山元町の沿岸部に関しては、まずいちご関係が動き出しました。震災前、山元町の沿岸部ではいちご栽培が盛んであったという経緯があります。2011年以降、もちろんいちご以外にも農地の除塩や、がれき除去、基盤整備も同時に行われてきましたが‥
①農機具が津波で流出、破損
②農地の整備事業が進まない
③家屋が損壊などで農地まで手が回らない
④高齢や身内を亡くした
などの理由で、離農される方も多く、農地が活用されない状況でした。津波による物理面(①~③)と精神面(④)の影響が混在していました。
いちごについてはいちご農家さんがグループを結成して国などの支援を受けて再建したり、町としても山元町=いちごということで積極的に支援を行っていました。一方で、いちご以外の農家さんは兼業が大半であることなどから、自力で農地を元に戻すか、復興事業で農地整備が終わるのを待つという感じでした。そんな中で、何か畑で栽培出来るものが無いかと考え始めたのが2013年でした。
同時に、報道されているより実際の塩害はひどく無いのではないか?という予想もあり、それを自分の手で試してみたかったというのもありました。実際に試さないと分からないことが多々あるという経験は、長年研究に関わっていたせいかもしれません。
いちご以外の作物を選んだ理由については‥
①元いちご農家さんの復旧が優先だったこと
②多額の費用がかかること
③自分自身がいちごの栽培に詳しくなかったこと
④菅野さんがいちご農家ではなかったこと
⑤いちごは支援が手厚く、自分が関わらなくても大丈夫そうだったこと
以上の点からでした。
栽培にあたっては、①栽培が簡単であること、②食べて美味しいことを優先しました。最初の頃は『珍しい』ということも入れていたのですが、紫とうがらしや甘いとうがらしなど珍しいだけでは売れないことから、そこは反省点となりました。
さつまいもにたどり着くまで

(2012年)
宮城県境から福島県境を歩き、沿岸部の雑草を調査。
雑草のヒエが非常に多くなっていることに注目。

繁茂する雑草のヒエ(イヌビエ)

(2013年)
津波の浸水した土地での農作物栽培を考える。昨年の調査の結果から、ヒエを中心とした雑穀が良いと考えて数種類のヒエを取り寄せる。さらに、ヒエにはアレルギーが少なく健康食品としての需要も高いと考えた。

5月に山元町の沿岸部で畑を借りる。時期的にヒエを栽培するのに遅くなったことと、脱穀が難しいことからダイズ栽培に変更。使用するダイズは水はけの悪い土地でも育つ品種を滋賀県から取り寄せる。ダイズは栽培が簡単、過去に山元町での栽培実績があるという理由もあった。

ダイズ畑の様子

途中までは非常に良く成長したものの、成長時期の長雨で不作となり失敗。また、月に1度程度の手抜き管理だったことも良くなかった。具体的には新幹線の始発で宇都宮から仙台に向かい、山元町で畑作業をして最終の電車で帰るという自称『新幹線農業』でした。それでも、塩の影響が無いことを確認することができた。

さつまいも栽培

(2014年)
沿岸部の砂地、貧栄養の土に合い、しかも栽培が簡単な作物をと考えてさつまいもにたどり着く。品種は、近年注目されているべにはるか。この品種を知ったのは、宇都宮の優食キッチンのおかげ。インターネット検索でたどりついた鹿児島の農家さんから苗を取り寄せて栽培開始。他に、安納いもと奈良の紫とうがらし、甘いとうがらし2品種を試験。

紫とうがらし(熟すと赤くなる)

安納いもは条件が合わず失敗。とうがらし栽培は大成功したものの、どう活用するかが上手く見出せずに保留。べにはるかは予想以上に良く成長し、12月の試食でかなり甘みのあることが判明(市販品と同等かそれ以上)。

(2015年)
保管中のさつまいもが寒さで傷みだす。傷んだ部分を削った上でこれまでにお世話になった方々に焼きいもを送付。5月下旬からさつまいも栽培を開始し、1000本を植え無事に収穫をすることが出来て2016年の初頭に無事完売。

(2016年)
さつまいも3000本を栽培し、秋に2トン程度(推定)の収量。山元町の福祉団体・工房地球村にさつまいも畑をつくり一輪車一杯の収穫。同じく山元町のNPO法人里山ひろばにさつまいもの苗を提供。

(2017年)
NHKの取材を受け、2017年1月20日(金曜)18時10分~の宮城県向けニュース『てれまさむね』内で放送される。放送の翌日、山元町の夢いちごの郷で販売中の干しいも、山元町のケーキ店・プチットジョアさんで、さつまいもを使用したミルフィーユが完売。2017年5月より4年目のさつまいも栽培が始まる予定。

まとめ

このような流れで現在に至ります。被災地に何が育つかはどんな農業の権威に聞いても可能性までしか言えないはずです。実際、菜の花や綿、トマトなど多くの栽培が行われました。

失敗にせよ成功にせよ、これらはいつかまた起こる震災後に向けての貴重な資料として残ります。また、本などの知識ではなく、実践して初めて分かることです。時間はかかったものの、実際に栽培をしたことは非常に良い経験になりました。

これまでに多くの方に興味を持って頂き、様々な形で支援や励ましを受けたことは非常に心強かったです。結局は何をするにしても人の繋がりだと思っています。そんなことを心に刻みつつ、今年も挑戦していきます!!


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2017年のさつまいもの動向

現在、出身地・宮城県山元町の農家さんとさつまいも栽培をしています。2014年から始め、今年で4年目となります。そのようなこともあり、最近はさつまいもに興味を抱く日々です。

北海道でのさつまいも栽培

先日、社会勉強‥という名目で都内を散歩して来ました。秋葉原駅近くの日本百貨店という全国各地の商品を取り扱いしているお店を覗いてきたのですが、干しいもの試食会をやっていました。さつまいもの産地は何と北海道で、話には聞いていたのですが、ついに北海道でもさつまいもが作られる世の中になりました。

さつまいもは南方の植物なので寒さは大敵です。そのような訳で、東北で栽培するだけでも大変だと考えられていた時代があり、今もそういう印象を抱いている方が多いようです。それが津軽海峡を越えて北海道での栽培となった訳で、どのような工夫をして栽培しているのか興味深いところです。

普通に考えると、早めに植えようにも寒いし、かと言って遅く植えても収穫時期に寒さにあたるという状況なのですが、ハウスなどを上手く活用しているのかもしれません。

写真は宮城県山元町での栽培の様子

品種は、山元町で栽培しているさつまいもと同じ『べにはるか』でした。この品種は近年まれにみる大ヒットで、いちごなら『とちおとめ』や『あまおう』、ぶどうの『シャインマスカット』のような有名な存在になりつつあります。似たような食感と甘みを持つ品種に『シルクスイート』というものがありますが、こちらは民間会社が育種したものなので苗が少々高めです。そんなこともあり、オススメは『べにはるか』です。

話を少し戻すと、まだ干しいもは試作段階でアンケートを取っている状態でした。甘みは結構あり、これから北海道のさつまいもが本格的に市場に流通するかもしれません。北海道は農業生産額が桁違いに大きいので真正面にぶつかってはとても勝てないので、山元では山元らしい農産物を出していければと思っています。世の中、探せば隙間はいくらでもあります。

埼玉でのさつまいも栽培

それから、1月21日にテレビ東京の『クロスロード』という番組でもさつまいもが取り上げられていました。最近、さつまいもがブームなのか自分の興味がそこに集中しているせいか、いろいろな情報が入ってきます。

坂井孝行さんという方で、証券会社を辞めて埼玉県熊谷市でさつまいもを栽培しつつ、焼きいもや干しいもなどの商品を販売していました。こちらも人気は『べにはるか』でした。『芋屋TATA』という屋号で営業しているようです。

カッコイイ農業を目指しているとのことで、面白い番組でした。もしかしたら、山元町も10年くらい後には沿岸部は全てさつまいも畑になっているかもしれません。実際は、そんなにかからない気もしています。とにかく、夢が見れるというのはとても良いことで、毎日が楽しくなります。


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宮城県でのさつまいも栽培事例

情報はインターネットが発達してもなかなか知りえないもので、宮城県内で5年前からさつまいも栽培をしていた方達がいたようです。2016年1月6日付の河北新報に以下の記事が掲載されていました。

記事の概要

以下に、掲載されていた記事を引用したいと思います。まず、概要は以下の通りです。
徳島県のサツマイモの高級ブランド「鳴門金時」の苗を宮城県内で植えて「仙台金時」として育てようと、東日本大震災で被災した県内農家らが栽培を始めて5年。収穫が軌道に乗り、栽培の呼び掛け人らが今月の毎週土曜日、仙台市中心部で仙台金時の焼き芋を期間限定販売する。まろやかな甘みとしっとりした食感を広くアピールし、販路拡大を目指す。
さつまいもの栽培については、東日本大震災が1つの契機で、塩害に強く簡単に育てられるという理由もあったようです。恐らく津波の浸水した沿岸部での栽培だったとは思うのですが、この記事からそこまでは分かりません。
地図で調べた限りでは、以下の記事に記載がある大崎は内陸の自治体のようです。もしかすると、沿岸部での栽培を見て興味を抱いた農家さんが居たのかもしれません。
収穫量
仙台金時の栽培を呼び掛けたのは徳島県小松島市出身で、青葉区の飲食店で料理人として働く浜松彰宏さん(53)=仙台市太白区=。農業を営む常連客に「小型の耕運機1台で育てられる。塩害にも強い」と提案したのがきっかけだ。2012年5月、浜松さんが徳島県鳴門市の農家から取り寄せた鳴門金時の苗計約600株を、宮城県内の農家6人がそれぞれの畑で試験的に栽培。同年秋に計500キロほどだった収量は年々増え、昨秋は仙台、石巻、大崎の3市の計9人が植えた計4000株から計約2トンを収穫できた。
さつまいもの収穫量は品種や栽培の条件によってさまざまなので一律には言えないのですが、少なくとも1株で800グラム程度は収穫できると思います。2012年が600株で500キロなので、1株だと約830グラム、2016年は4000株で2トン(2000キロ)なので1株だと約500グラムとなります。
実際の収量を正確に把握するということは難しいのですが、もう少し収穫出来てもいいような印象を受けました。とは言え、実際に栽培をしなければ分からないことなので貴重なデータだと思います。
ちなみに、生いも1キロを500円で販売するとすれば、2000キロ×500円で100万円の売り上げとなります。そこから生産原価(苗代、マルチ代、肥料代、人件費など)を差し引いても50万円前後は残るかと思います。さつまいもはどうしても保存場所が必要なので、保存方法の問題が解消されればだいぶ栽培しやすくなると思います。
販路
あとの問題は販路なのですが、記事によれば仙台駅前の商業ビルで販売を行うようです。
これまで産直イベントで販売してきたが、販路拡大が悩みだった。知人の青葉区の広告代理店社長大山裕司さん(45)らが焼き芋にしてJR仙台駅周辺で売ることを発案。駅西口の商業ビル「イービーンズ」を運営するエンドーチェーン(青葉区)が、売り場スペースの提供と芋焼き器の貸し出しを快諾した。
 焼き芋は仙台駅ペデストリアンデッキに直結するイービーンズ2階出入り口で7、14、21、28の各日正午から午後7時まで販売する。1個300円。1日当たりの売り上げ目標は100個で、2月以降は在庫状況をみて検討する。 浜松さんは「素材の良さを伝えるには焼き芋が一番。口コミで評判が広まってほしい」と願う。連絡先は大山さん090(4552)4871。
なると金時について
参考までに色々と調べてみたら、なると金時という表記は品種ではなくて商標のようです。品種は高系14号というそうです(全農徳島県本部のHPには高系14号を系統選抜したと書いてありました)。ほとんどの消費者の方は興味が無い話かもしれませんが、『商標』と『品種』は全く別物です。
 
ちなみに、2014年から山元町で栽培しているさつまいもの品種は『べにはるか』といいます。べにはるかも、『紅天使』や『甘太くん』という商標を取得している団体があります。販売するための手法は色々とあってもよいと思うのですが、品種と商標を混同して販売している事例もあり、ちゃんとした表記は大切だと思います。
べにはるかについて
ついでに、べにはるかについて書くと、近年の育種の中でも大当たりの品種だと思います。数年前、初めて食べた時はとろけるような触感と強烈な甘さに驚きました。じっくりと加熱して、1日から2日寝かすと更に甘みが増します。皮から独特の香ばしい甘い蜜がしみ出してきます。
 べにはるか
安納いもが蜜いもと呼ばれて大人気になったことがありましたが、安納いもよりもべにはるかの方がクセが無いという方もいます。安納いもは、若干ニンジンのような風味があります。この辺は好みかもしれません。
 
さつまいもの好みというと、『ほくほく派』と『しっとり派』に分かれるようです。関東の代表的な品種のべにあずまは前者のほくほく派です。一方で、べにはるかは後者のしっとり派です。これも、完全に好みの世界なので何とも言えませんがべにはるかはこれまでのさつまいものイメージを大きく覆した品種とは言えそうです。さつまいもそのものがお菓子のような存在になっています。
さいごに
話がだいぶ長くなりましたが、農作物の良いところは食べれば分かるということだと思います。どんなに宣伝してイメージをよくしても、味だけはごまかせません。仮に食味が90点と93点であれば、個人の好みの差程度かもしれませんが、90点と50点では隠しようの無い差となります。
宮城県山元町で育てたべにはるか(2016年)
それだけに、毎年が試行錯誤の連続で、そこが農業の面白いところだと思います。昨年、出身地・宮城県山元町で育ったさつまいもも貯蔵庫で美味しく熟成しています。


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