雑草の話12(ナガミヒナゲシのこと)
インターネットはクイズの答えや、大まかな情報を調べるには大変便利なのですが、時折怪しい情報がさも真実のように拡散されていて非常に危うい感じを抱きます。今回は、ナガミヒナゲシという雑草について書かれていた記事を考えてみようと思います。
Facebookの記事から
たまたま見ていたら、下のような写真が掲載されていました。
そもそも、ナガミヒナゲシが危険外来植物という定義は何の根拠も無い話で、こういうのがネットの怖いところだと思います。確かに、最近よく目にする雑草ですが、人間は慣れてしまえばその景色をそのまま受け入れてしまうように出来ています。例えば、一時目の敵にされていたセイタカアワダチソウなど。
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アレロパシー(植物から放出される物質の総称)の話についても、実験室レベルでいくら他の植物の成長を阻害する物質が多いとしても、実際の自然レベルでも影響を及ぼすかと言われれば否ということになります。実際、ナガミヒナゲシの周囲にも多くの雑草が普通に成長しています。
仮にナガミヒナゲシがアレロパシーを放出し、周囲の植物を駆逐するのであれば日本中、ナガミヒナゲシに覆われてしまうことになります。1種類の植物が自然条件下で覆い尽くすという現象はあり得ません。例えば、ゴルフ場の芝生は人間が管理することによって芝生の景色を維持しています。
それから、植物は多かれ少なかれ様々な阻害物質を出したり中に持っていたりするのですが、土壌に吸着されたり、雨に流されたりします。そんな植物があった ら、他の雑草もどんどん消えていき除草剤も1種類だけが対象となるから開発も楽になる訳ですが‥現実はどうでしょうか?ホームセンターの棚を見れば様々な除草剤が置いてあります。
外来と在来
これだけ人とモノの往来が激しい時代に外来とか在来という線引きは益々難しくなっていくと思います。雑草に国境がある訳じゃないし、野菜だって海外から持ち込んでいるものがほとんどです。純日本産の野菜はわさびとわずか数種くらいしか無いという話もあります。
様々な分類はあると思いますが、明治時代を境に「在来種」と「外来種」に分けられているようです。明治時代といっても今から100年くらい前ですから、人間にとっては非常に長い時間であっても地球のレベルから考えればほんの一瞬です。
そのような定義で分けられている植物に一喜一憂するのはどうかなと思います。結局は人間の生活・移動に伴った結果なので何も雑草が好んで拡大している訳ではありません。
自然と雑草
また、アレロパシーの話に戻ると、検定方法として雑草を寒天に植えてそこにレタスの種をまき、レタスの根の長さを調査するというものがあります。レタスの 根の成長を著しく阻害すれば、雑草に阻害物質が多く含まれているという発想です。
確かに、目で見れば分かるし室内で行う実験としては良く出来ているのですが、それがそのまま自然に当てはまりません。自然はそこまで単純化出来ないし、単純化できないから上手く回っているとも言えます。
1+1が必ず2になる自然だったら、とっくの昔に環境はもっとぐちゃぐちゃになっていたと思います。大きな震災や公害にもどうにか耐えてこれたのは複雑な部分や、多様性があればこそだと思います。
1本の草を目の敵にして取り除いたところで、大河に醤油を一滴たらした程度の影響も無いと思いま す。もしくは、水素水と呼ばれるただの水にご加護を求めるようなむなしいものかもしれません。
信じる者は救われれば良いのですが、騙されては元も子も無い 訳です。ネットの怖さを感じたので改めて書いてみました。