美味しい!は強い
現在、出身地である宮城県山元町の農家さんと沿岸部でさつまいもの栽培をしています。その畑は、2011年の震災で津波が浸水した土地でした。元々、農学部に在学していたということもあり、自分にできることは農業だと考えての行動です。
諸々のことはカテゴリー「宮城県山元町のこと」に書いてきましたが、地方では土地が余っているのが現状です。ある親戚からはタダで良いから畑とか田んぼを使わないかと言われたこともありました。300坪程度の土地でした。田舎の場合、300坪(約10アール、1反部)を1年間借りる場合、せいぜい土地代は1万円です。実際には5千円程度でしょうか。
タダでも農地を貸したいという意味は、
農地を農地としてちゃんと維持して欲しい
ということです。雑草の発生を抑えるということが大前提で、仮に作物が作れないまでも、雑草を生やしてしまうと農地として使い物にならなくなってしまうということが背景にあります。一方で、農地を借りたくても借りられないという話もよく聞きます。この辺については、また詳しく書きたいと思います。
さて、被災地での農業を選択した理由に、
美味しいものは強い
ということもありました。元々、田舎の生まれであったため新鮮な野菜は当り前でした。特に夏はナス、キュウリ、トウモロコシはいくらでも採りたてをもらえるという環境でした。田舎を離れてからはスーパーの野菜を食べているのですが、正直、野菜を美味しいと思う機会が格段に減りました。
現在、さつまいもの栽培をお願いしている宮城県山元町の菅野さんの畑に宇都宮から月一程度で通っているのですが、そこで食べる野菜はとにかく美味しいということに尽きます。
(左・大根葉の炒めもの,右・ジャンボインゲンの煮浸し生にんにく入り)
(左・玉ねぎを焼いて塩をふったもの,右・カブとキュウリの浅漬け)
本当に美味しいものには、余計な調味料はいらないと聞いていたものの、まさにその通りでした。肉や魚が無くても野菜がちゃんとメインの料理になるということを知りました。そして、美味しいものを食べると幸せな気分になれます。
もちろん、生産者のこだわりや土地の情報も伝えていくことは大事なのですが、それ以上に
美味しければ言葉は後で良い
ということで、誰に対しても自信をもって勧めることができます。特産品というと、つい物珍しさを追い求めてしまうのですが、美味しい野菜は立派な特産品になることに気が付きました。土地の余っている地方にぴったりだと思います。
ただ、採りたての野菜が美味しいのは当たり前の部分もあります。そこで、
流通段階で味を損ねないこと
販売の際の管理に気を付けること
調理法に気を付けること
ここまで徹底することが大切だと考えています。そのためにも、流通や小売、料理人などプロの力を繋いでいきたいと思っています。そして、消費者の口に入るまで徹底するということが大切だと考えています。