雑草の話2(大学院の研究テーマ)
前に書いた雑草の話に続き、再び雑草のことを書いてみようと思います。「大学で雑草を研究していた」というと、驚かれたり不思議な顔で見られることも多いのですが、雑草は身近な植物だけに人間の生活にとっても非常に影響のある植物です。
本当は、もっと研究されても良いはずなのですが‥自分の知る限り、研究室名に雑草と入っているのは宇都宮大学と京都大学にしかありません。東大にも、理研にも本格的に雑草を研究している研究室はありません。そのような訳で、雑草の研究者は非常に限られています。もちろん、雑草の研究に需要が無い訳ではないのですが、今の日本ではそういうことになっています。
さて、大学院時代の研究内容です。自分のことながら研究のタイトルは忘れてしまったのですが、次のサイトを使うと見つかります。ついでに、論文を探せるサイトも一緒に掲載しておきます。いずれも日本語で検索できます。
博士論文の検索サイト→CiNii Disserations
日本の論文の検索サイト→CiNii Articles
大学図書館の検索サイト→CiNii Books
早速、CiNii Disserationsで検索すると、ちゃんと出てきました(出てこないと困るのですが)。研究のタイトルは「雑草を用いたカドミウムのファイトレメディエーションに関する研究」というものでした。
これだと、何のことか分からないと思うので、1つずつ説明していきます。まず、カドミウムは元素記号がCdで、有害な重金属の一つです。顔料のカドミウムイエローとして使われたり、ニッカド電池というのもありました。ニッカドはニッケルカドミウムを略したものです。また、イタイイタイ病の原因物質にもなっています。
現在でも鉱山の下流や精錬所の周辺など、カドミウムが土壌中に多く含まれている農地があります。土壌中のカドミウムの一部は植物に吸収されるため、カドミウム濃度の高い土地でイネを栽培すると米の中にカドミウムが含まれる場合があります。
現在の基準では、玄米1キロあたり0.4mgを超えるものは流通が規制されています。そのような訳で、カドミウムは、米を主食とする日本人にとっては気を付けなければいけない存在です。
次にファイトレメディエーションについて説明します。植物はイネに限らず、カドミウム、亜鉛、鉛など様々な物質を吸収します。この植物の性質を利用して、土壌や水の中に含まれる物質を植物に吸収させて土壌や水を浄化することをファイトレメディエーションといいます。
1.対象としている物質を植物の体内に取り込ませて除去する方法
2.根に吸着させる方法
3.葉から気化させてしまう方法
などいくつかの方法があるのですが、これらの総称としてファイトレメディエーションという言葉が出てきます。主に1の意味合いが強く、1についてはファイトエクストラクションという言い方もします。ちなみに、エクストラクションとは、抜き取ること、除去するという意味です。一言で表現すると次のようになります。
ファイトレメディエーションとは「人間にとって有害な物質を植物に取り除いてもらう」こと。
日本では大体2000年前後からファイトレメディエーションの研究発表が増えてきた印象があります。狙った訳ではなかったのですが、ちょうどブームに乗った研究でした。研究のタイトルの説明だけでだいぶ長くなってしまったので、詳しい内容についてはまた改めて書きたいと思います。