これまでに学術論文を読む方法や、いくつかの雑草の話をしてきました。学術論文というと硬い内容が多く、専門分野を知らないと分かりにくいと考えている方がほとんどだと思います。

今回は、身近な事例を取り扱った学術論文を紹介したいと思います。以前に書いた話と少し重複しますが、作物に雑草の毒が移った話です。

ナスに雑草を接ぎ木したらナスの実に毒が移った

この事例は以前、何かで読んではいたのですが、この記事を書くにあたり資料を探してみました。もちろん、インターネットです。そうすると、日本食品衛生学会が発行する「食品衛生学雑誌」に詳細が掲載されていることが分かりました。

論文も無料でPDF形式で公開されています。こちらの論文を読まなくても分かるように書くつもりですが、興味のある方はダウンロードして読んでみて下さい。興味深い事例が紹介されています。

ナスの花ナスの花

まずは「はじめに」という項目を読んでみて下さい。学術誌によって多少の形式の違いはあるのですが、普通は冒頭に要旨が書かれています。要約すると、次のようになります。

沖縄の方がナスにチョウセンアサガオという有毒な雑草を接ぎ木した。

チョウセンアサガオに含まれる有毒成分がナスの実に移った。

ナスを食べた方が意識混濁などの食中毒となった。

チョウセンアサガオという雑草は、論文の冒頭でも紹介されているように江戸時代の医師・華岡青洲が麻酔の原料として使ったとされるものです。多量に摂取すれば有害になります。小説ですが、有吉佐和子さんが書いた「華岡青洲の妻」という作品もあります。

ワルナスビ注・チョウセンアサガオではありません

手元にチョウセンアサガオの写真が見つからなかったので、同じナス科のワルナスビの写真で代用しています。チョウセンアサガオは触れば臭い、トゲがあるという強烈な雑草です。実もクリやウニのような感じです。ネットで検索をしてみて下さい。

接ぎ木は、同じ科の植物が使われるのですが、正直なところ雑草と作物が接合するとは思いませんでした。それだけに、この論文の事例には驚きました。結果の項目に中毒に至るまでの経緯が書かれていますので、再び要約したいと思います。

正体不明の台木をチョウセンアサガオと知らずにナスと接ぎ木を行った。

1本だけが成長し、直径5センチ、長さ10センチの実を1個つけた。

このナスをミートソースに加えたスパゲティを食べた。

ふらつき、ろれつが回らない、意味不明の話をするなどの症状を呈した。

その後、ナスが疑われて調査をした結果、台木の正体が明らかになった。

こういう流れで、チョウセンアサガオの存在が明るみに出たようです。元々は興味からの接ぎ木で、実に毒が移行することは全く想像していなかったようです。論文の考察によれば、有毒成分のトロアンアルカロイドは根で生合成され、全草に移行するそうです。

考察の中で、チョウセンアサガオを台木にした食中毒事例は本邦初であると指摘されています。まるで小説のような話ですが、現実に起きた雑草にまつわる話でした。そのうち、小説やドラマの題材になるかもしれません。


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